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さらばだルンペル
次の日、街には小雨が降っていた。家々の白い壁は空とおなじく曇っている。街の人たちも顔を曇らせていた。
昼過ぎに起きたルンペルは、現場の状況を踏まえつつ彼なりに犯人像を考えていた。犯人は……悪い奴に違いない。その顔もきっと悪い顔だ。鏡が割れていたのも、自分の顔が不細工すぎて割ったんだ。自分も鏡を見たらそうする。
「おい足手まとい。あっちのほうをみて見ろ……衛兵団の旗が立ってる。事件だぜ」
先に起きて魚をむさぼっていたナッチが、目を細めて遠くを見つめながらいった。
「殺人鬼か!」
鮮度の高い事件現場であればなにかわかるかもしれない。早速、二人は遠くに見えた旗へむかった。
道中、大通りから一本外れた通りを歩きはじめてすぐ、壁に貼られた指名手配書が目についた。町のいたるところに貼られているようだ。
殺人鬼二人と題された指名手配書をナッチが一枚破りとった。手配書には男女の顔が描かれている。ナッチは子供のラクガキとしか思えないような下手くそな顔が描かれ、ルンペルは異常に美化されていた。指名手配書のていをまるでなしていない。あのオカマの衛兵が原因だろう。
「なんだよ。これなら問題なさそうだな」
胸をなでおろすナッチにルンペルが顔をしかめる。
「でも特徴のところに鎖で繋がれてるってあるぜ」
「鎖は隠さないとまずいな……」
「なら……手を繋ごうぜ。袖に鎖を隠していればバレない」
ルンペルはサッと手を自身の後ろに回した。手首を切断される気配があったからだ。しかし、意外にもナッチは手をさしだした。
「いや、お前の手を切断するのもいい方法なんだけどよ。血だらけのアクセサリーを手にぶらさげるのは余計やばいからな」不貞腐れたようすで彼女はいった――。
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