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3月20日
面接会場は、会社のすぐそばです。
指定された場所に来ました。すると、小部屋の前に用意されたパイプ椅子に座って待つように言われました。他にも受ける人がいるようです。
何だか、そわそわと落ち着きません。
結局、私は小谷さんにはっきりと、面接に行くので、早退させてくださいと言いました。
小谷さんは、いつもの半眼を意外そうに見開きました。けれど、それも一瞬のことです。すぐに元の表情に戻りました。
「はい、どうぞ」
その時、鼻で笑われたような気がしました。
五分の魂など、鼻息で吹き飛ばされそうでした。そうはさせるかと、踏みとどまりましたけど。
面接を待っている間に、係の人が本を持ってきました。
「面接の最後に朗読をしてもらいます。この目次の中から選んでください」
そう言って渡されたのは、何と、1年生の国語の教科書でした。私は梨花の音読に毎日つき合っているので、すっかり頭に入っています。
私は迷わず「たぬきの糸車」にします。
これはきっと、私に巡ってきた、チャンスですよね。
観音様!
どうか、どうか
私にお力をお授けくださいませ!
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