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「春を待つ風」
女性一人用です。
―――本編―――
「卒業してから何度目の春がやってきたのだろう……。桜が咲く季節になると、決まって貴方の事を思い出す」
「あの頃、一緒に机をくっつけて勉強した日々は、もう遠い昔の話なんだよね。恐竜が絶滅したくらい大昔の話みたいに思えるから、悲しくて笑ってしまいそうになるよ」
「あの頃の私は、普通でいることに苛立ちを覚えていて。よく世界の滅亡なんかを願っていたよね。そんな私を笑って心配してくれた貴方。どうしてそんなに優しくしてくれたの?」
「そうやっていつもいつも心配してくれるから。余計なお世話だよ! って、貴方に甘えて突っぱねることで、私は私でいられた。でも、本当は痛いくらいわかってたんだ……」
「普通になんてなりたくなかったけど、普通にしか生きていけない自分のこと。貴方もわかっていたんでしょう? だから私たち、離ればなれになるしかなかったんだよね……?」
「結局。あれからもう何年が経つんだろう。貴方は今どこで何をしていますか?」
「私は貴方を思い出して、今年も一人、桜の花を眺めています」
―――おわり―――
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