「春を待つ風」

1/1
前へ
/7ページ
次へ

「春を待つ風」

女性一人用です。 ―――本編――― 「卒業してから何度目の春がやってきたのだろう……。桜が咲く季節になると、決まって貴方の事を思い出す」 「あの頃、一緒に机をくっつけて勉強した日々は、もう遠い昔の話なんだよね。恐竜が絶滅したくらい大昔の話みたいに思えるから、悲しくて笑ってしまいそうになるよ」 「あの頃の私は、普通でいることに苛立ちを覚えていて。よく世界の滅亡なんかを願っていたよね。そんな私を笑って心配してくれた貴方。どうしてそんなに優しくしてくれたの?」 「そうやっていつもいつも心配してくれるから。余計なお世話だよ! って、貴方に甘えて突っぱねることで、私は私でいられた。でも、本当は痛いくらいわかってたんだ……」 「普通になんてなりたくなかったけど、普通にしか生きていけない自分のこと。貴方もわかっていたんでしょう? だから私たち、離ればなれになるしかなかったんだよね……?」 「結局。あれからもう何年が経つんだろう。貴方は今どこで何をしていますか?」 「私は貴方を思い出して、今年も一人、桜の花を眺めています」 ―――おわり―――
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加