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あれからボクは再びカナちゃん家のリビングに飾られて、貯金箱を続けることになりました。
時々、お客さんも見えます。
その中に、あの時の行員のお姉さんもいました。
あの出来事がきっかけで、カナちゃんとお姉さんは仲良くなったのです。
お姉さんはあれから数年後に結婚をしました。
それからまた数年、生まれたばかりの赤ちゃんをカナちゃんの家に連れてきました。
その子はボクを指差して「ぼーる、ぼーる」と楽しそうにはしゃぐのです。
カナちゃんが大人になると、ボクはその子の手に渡りました。
古びて壊れたボクだけど、人から人の手へと渡り、巡り巡って生きていくことができるんだね。
それってなんだかお金みたいじゃない?
カナちゃんが銀行強盗をやっつけたあの日、駆けつけたお母さんに言った一言を、今でも思い出します。
「ねぇ、お母さん。今日は本当に、忘れられない1日だったよ」
ボクにとっても、その日は忘れられない1日になったよ。
だってね。
ボクがカナちゃんの勇気で、新しい魂を吹き込まれた日だから。
ちゃりん。ちゃりん。
ボクの中で、今日も魂が吹き込まれる音がする。
ボクはちゃりん丸。
これからもずっと、誰かの貯金箱だよ。
【end】
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