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ちゃりん丸・2
やぁ、ボクはちゃりん丸。貯金箱だよ。
カナちゃんは放心状態だから、ここからはボクが説明するね。
【女子中学生、お手柄! 強盗犯に投げつけたのは“貯金箱”】
そんな見出しが新聞に飛び交ったのは、その翌日。
ボクを投げつけられた銀行強盗未遂犯は脳しんとうを起こしてその場に倒れ、男性銀行員や警備員に身柄を確保されたんだ。
カナちゃんの勇気ある行動は表彰もされ、カナちゃんは一躍有名人にもなったんだよ。
カナちゃんが体育が苦手なのは知っていたし、毎年のスポーツテストでのハンドボール投げの記録が惨憺たるものだったのは、皆の会話で聞いて知っていたよ。
「お前はどんだけへなちょこなんだ、肩の力が足りない、肩の力が! お父さんが中学の頃はな……」なんて散々笑われて、結局自慢話を聞かされてしまったしね。
そんなカナちゃんが無我夢中でボクを投げたのは、正義感と勇気だと思うんだ。
だからね。
カナちゃんの投擲能力に、ボクも後押ししたいと思ったんだ。
ボクはもう、声を出すことも鳴くことも、表情を見せることもできなくなってしまったから。
もう、死んだ身だったから。
だからこそ、最後の命を燃やして、空中で加速するっていう奇跡も起こせたんじゃないかと思うんだ。
というより、ボクも「危ない!」って思ったし、「カナちゃんを助けなきゃ!」っていう気持ちで、それはもう必死で必死で。
本当に必死だったから。
犯人に当たってよかった。
カナちゃんを――あの場にいる人たちを助けられて、本当によかった。
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