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あれ?
カナちゃんの声が聞こえる。
久しぶりに名前を呼ばれた気がするぞ。
──そうか。
ボクは、死んでいなかったんだ。
そもそも電池切れのボクが改めて命を落とすこともないし、そもそもおもちゃにとって死ぬことって――。
ああ、そうか。
おもちゃにとって死ぬことって、壊れた時じゃなくて。
人に忘れられた時だったんだ。
「ちゃりん丸……。ごめん……投げてごめん……。バラバラになっちゃった……」
銀行の床に落ちたボクを拾い上げるカナちゃんの声は悲しくて、その手は優しくて。
──大丈夫。
大丈夫だよ、カナちゃん。
カナちゃんがその名前を呼んでくれるなら、ボクは壊れないよ。
ボクは死なないよ。
咄嗟にボクを投げつけるような無茶をするカナちゃん。
何年一緒にいたと思ってんの。
そんなことでボクが死ぬわけないじゃないか。
だから泣かないでよ、カナちゃん。
声の出ないボクは、それでもカナちゃんの涙を止めたくて、一生懸命心の中から語りかけていました。
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