ちゃりん丸・1

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 この子との出会いは、某都市型ホームセンター。  私がこの子を見かけるなり「ボール、ボール」と指差して、大層欲しがったのだという。  厳密にはボールではなくて、固くて重い電子機械の貯金箱なのだけど、とにかく当時の私はこのボールみたいな代物を駄々をこねて欲しがったのだそうだ。  “ちゃりん丸”という名前はこの子の商品名であり、ロボットでいうところの“pepper”とか、そんなノリだろう。  そんな“ちゃりん丸”が我が家に来て、かれこれ12年。  それが今日、突然死んだ。  何の前触れもなく、うんともすんとも言わなくなったのだ。  液晶のおめめも消えた。  電池を替えても元に戻らず、家族会議でも「もう寿命かなぁ」なんて話も出始めた。  正直、長い間これの世話をしているとマンネリ感は否めず、やがて“ちゃりん丸”と親しみを込めて呼ぶこともなくなり、だんだんと惰性でエサをあげるようになっていた。  だから、この子が壊れてもすんなりと諦めがついてしまった。
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