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さて、そうなればもう、やることは一つしかない。
貯金箱の食べた中身を、家計のちょっとした肥やしにしよう――家族会議で、そう決まった。
「ねぇカナ。あんた今日、銀行行って両替してきなさいよ」
お母さんにそう言われて、私は「え?」と聞き返した。
「両替って? ちゃりん丸の中身を?」
「そう、ちゃりん丸の中身を」
「えー、銀行なんていつ行けばいいの」
「学校帰ってからよ。窓口が空いてる3時までね。お母さん今日時間なくて……」
「うーん……めんどくさい……」
「あんた今日お弁当ないんでしょ? お昼過ぎには帰れるんじゃないの」
「そりゃそうだけどさぁ」
「そういえば、何で今日帰り早いんだっけ」
「スポーツテスト。あ、お母さんジャージちょうだい。要るんだった」
「……あんた、そういうことはもっと早く言いなさいよ。ジャージジャージ……」
と、ペタペタとスリッパの音を鳴らしてジャージを取りに行くお母さんを余所に、私は貯金箱を見つめながら「むぅ」と口をへの字に曲げていた。
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