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「あの、いくら入ってるかわからないので中身数えたいんですけど……」
そう言うと、お姉さんは「ではこちらへどうぞ」と座席スペースまで用意してくれた。
「貯金箱ですか?」
「え? あ、はい」
「それ、お金を入れないとお腹が空いちゃうっていうお品物ですよね?」
「あ、はい、そうです」
お品物。さすが銀行員のお姉さん、お言葉遣いが丁寧でごじゃる。
「うふふ。私も小さい頃持っていたんです。可愛いですよね。お腹が空いたら鳴いたりして……」
両手を合わせてはにかみながら話してくれるお姉さんもとても可愛いです。
「はい! そうなんですよね! 鳴いたりして可愛いです!」
我ながらオウムみたいな受け答えだなと思った。
「では、御金額がおわかりになりましたら、こちらの方にご記入を──」
とか何とか言って、お姉さんは頭を下げてにこやかに立ち去っていった。
他のお客さん──お年を召した腰の曲がった女性──の対応に追われている。
……さて、私は心置きなく、貯金箱のお金を数えることにしよう。
恐縮しながら座席に着いて、中身を出そうと貯金箱の裏側のフタ──人間でいう所のお尻に当たる部分?──に、カリッと指を掛けた。
――その時だった。
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