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「────?」
ふと、入り口の方から不穏な気配を感じた。
徐々に、疑問符を伴うざわつきがフロア全体に伝わってくるような感じだった。
見ると――。
(……え、嘘……)
全身黒づくめで目出し帽を被り、手に銀色の物をちらつかせる一人の男がいたのだ。
(……銀行……強盗……?)
ここにいる誰もが、ドッキリか何かだと思ったに違いない。
最初はみんな、遠巻きに見て訝しむだけだったからだ。
だけど、やがてお客さんの一人が男の持つ刃物を見てパニックを起こしたように逃げ惑ったので、連鎖するようにフロア中にどよめきが起きた。
「おい! 騒ぐんじゃねぇよ!」
男が叫ぶと、いよいよ店内はパニック。
(えっ? えぇぇぇ……!?)
他のお客さんが店内の隅の方へ逃げる中、窓口の側の座席に座っていた私は、貯金箱を抱えたまま固まってしまった。
ドラマとかコントを見ているみたいで、まるで現実感がない。
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