ちゃりん丸・1

9/10
前へ
/14ページ
次へ
 ──ちなみに、今だから言うけど。  私のハンドボール投げの記録は中学生平均を大きく下回り、体育の授業でソフトボールのピッチャーを持ち回り制でやってもへなちょこボールしか投げられないから、大ひんしゅくを買っている。  そんな私が“これ”を投げつけたのは、咄嗟の判断と思いつきとしか言い様がない。  神様のお告げに近いものなのかもしれない。  恐らく、胸に抱えた感触があまりにもボールに似ていたから、思わず、といった感じだったのだろう。  それはもう、本当に奇跡だった。  今思えば、よくあんなスピードが出て、抜群のコントロールまで発揮できたものだ。  小銭のたっぷり入ったハンドボール大のそれは――。  銀行強盗のこめかみにガツンッ!とクリーンヒットしたのだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加