疑惑

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舌を絡ませていると、どんどんさっきまでの痛みが欲求に変わっていって、俺はユウトの腰を自分の元へ引き寄せた。 俺の上にヤツがそのままうつ伏せになるカタチになって、舌だけの愛撫は続いた。 「ん……」 ズボンの布地を通して、互いのペニスはギンギンにかち合っている。 「あ……ハヤテ」 尻を引き寄せると、少し擦れたみたいで、ヤツはああ……!と上体をのけ反らせる。 「ん……っ、あ……」 欲しそうに荒くなっていく息を耳元で感じながら、俺は優しく語りかけた。 「ユウト……お前が欲しい」 ユウトは黙ってる。 「本当にお前が欲しいんだ」 そんな。 声にならない声でヤツは俺を見下ろした。 俺はもうハヤテのモノなのに。 責める目がそう言っている気がして、 俺はヤツをベッドに押し倒した。 上から丁寧に服を脱がすと、ヤツは上気した顔で天井を見つめていた。 まるで全てを受け入れるみたいだった。 はだけた胸を優しく撫でてやる。 感じるというより安心したようすで、ヤツは俺の手を握った。 「……ん」 俺の手を自分の下半身へと持っていく。 ―触って欲しい― 全身がそう訴えかけているが、俺はまだ下半身を触ってやる気はなかった。 それが、理由はどうあれ一人でカナメの部屋に行ったヤツへのおしおきなのか、それとも単純なサディズムなのか。どちらかは分からないが、俺は身悶えしているユウトを見ると興奮した。 ヤツの身に触れながら、自分のモノをしごいて落ち着かせる。 「や……あっ……ずるい」 「お前も自分のを触ればいいだろ」 「そんな……恥ずかしい」 手をもってってやろうとすると、ヤツはイヤがって、代わりにその手で俺の頬を撫でた。 俺は顔を上げる。 「ハヤテ……愛してる」 俺の手が止まった。 「ずっと愛してた……あの日、俺を助けてくれた時から」 あの日……? あの日の思い出に心当たりは無かったが、なぜかずっと昔に忘れた大切なモノを思い出した気がして、俺は胸を震わせた。 「ハヤテ……?」 ヤツが俺の頭を抱くので、俺は愛してるとうまく言えないまま、涙を押し殺した。 その後のセックスは、あまりよく覚えていない。 × × × 「なあ……」 射精を終えた俺のモノを拭いているユウトの髪を撫でて、俺はぼんやりと切り出した。 「『あの日助けてくれた』って……なんのことだ?」 ユウトは顔を上げて寂しそうに微笑む。 「覚えてないならいいよ」 よくない。 だって、それがお前が俺を好きになった理由なんだろ。 覚えてないなら、まるで他人のことみたいじゃないか。 そう言おうとするのに、それを聞いたら何だかユウトが遠くへ行ってしまう気がして、俺は聞けなかった。 「ねえ、ハヤテ」 ユウトが俺の頬を両手で挟む。 「俺の味方はハヤテだけだよ……?」 そう言って唇を重ね合わせるので、俺は再び泣きそうになってしまった。 傍らに、結局使うことのなかったコンドームの箱が落ちていた。
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