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とうとうテスト準備期間になった。
徹夜をするようになり
父親よりも寝るのが遅くなった。
その為、その日に勉強した自主学習ノートを次の日に見せるようになった。
相変わらず怒られることには代わりはなかったが。
僕は必死に勉強をした。
勉強をした理由は
悪い点数で怒られたくなかったからだ。
そして、とうとうテスト前日、猛勉強し
今までにないくらい集中した。
階段から誰かが降りてくる音がした。
この足音はお父さんではない。
安心した。
音に敏感になったせいか
足音だけで家族の誰かか分かるようになっていた。
「まだ起きていたの?」
「それとも朝早く起きて勉強してたの?」
そこに立っていたのはお母さんだった。
お母さんはとても優しい人だった。
「え、もう朝?」
今から寝たとしても30分しか寝れない。
でも、流石に寝ないとなと思って
30分だけ寝ることにした。
家を出る時間が父親と違うため
朝に父親と会う確率は極めて低い。
30分後
起きて顔を洗い朝御飯を食べて
学校へ向かった。
学校に着きテストが始まるまで勉強の復習をした。
回りを見渡したが勉強している人は数えるほどだった。
そして、テストが始まった。
しっかりと名前を書き、テストに挑んだ。
「………。全然分かんない。」
そう。俺は国語と英語が大苦手なのだ。
壊滅的に。
英語に関しては勉強はしていたが教科書を無理やり暗記したようなものだった。
国語に関しては勉強の仕方が分からない。
そして、国語の文章問題なんて何いってるのかわからなかった。
「文章を読んで次の問いに答えなさい」
「は?」
文章を読んでも全然理解出来ない。
数学、理科、社会は余裕だった。
満点じゃないかと思うくらいの自信があった。
でも、国語と英語のせいで俺の心はボロボロだった。
家に帰る足取りは重かった。
「ただいま」
「おかえり」
「テストどうだった?」
お母さんだ。
「国語と英語がちょっと。」
「そっか。」
「今日はゆっくり休みなね。」
お母さんは優しくそう言った。
テストも終わったし
今日はゆっくり休むことにした。
普段見れなかったテレビを見た。
知らない人が沢山いた。
中学に入ってからはテレビは朝ご飯を食べる時間帯に流れるニュースくらいしか見てなかったからだ。
久しぶりにちゃんと見るテレビは面白かった。
「そろそろ父親が帰ってくる時間だ」
父親は基本的に仕事終わったらまっすぐに家に帰ってくる。残業もそんなに無かったから
決まった時間に帰ってくる。
ごく稀にある飲み会の時は、帰ってくるのが遅いから僕は飛んで喜んでいた。
「ただいま」
父親が帰ってきた。
「おい。持ってこいよ。」
「え?何を?」
「は?テストの問題用紙だよ。」
やばい。予想外だった。
問題用紙から何が始まるのか想像がつかなかった。
というか、考えるよりも先に体が勝手に動いた。
ゆっくりしていると怒られるからだ。
急いで問題用紙を持ってきた。
「はい。」
問題用紙を手に取り、少し目を通したあと
やはり殴られた。
「問題用紙に答えが書いてないぞ!!これじゃ自己採点も出来ないじゃないか!」
「どうせろくに出来なかったんだろ?」
「問題用紙に考えた形跡が無いぞ!」
「お前の出来た。やった。は信用ならないんだよ!」
「記録を残せよ記録を!!!」
「はい。次からは気を付けます。」
「薄っぺらい信用のならない言葉はいらないんだよ!行動してくれよ!」
「俺はレベルの高いことを欲求しているか!?」
「全て普通の事なんだよ!常識だぞ!」
「何故、普通の事が出来ないんだ!」
「何故、常識の事がお前には出来ないんだ!」
「何故、お前だけがこんなに言われる分かるか!?」
「お前だけが異常なんだよ!」
「何!?お前は病気なのか!?」
「病気なら謝るぞ?病院行った方がいいんじゃないか!?」
どうやら父親からしたら
僕は普通じゃないらしい。
常識からかけ離れてるらしい。
「病気なんかじゃないし……。」
そんなことを言葉に出来ることは無かった。
「おい!!早く俺の前から消え去れ!」
「こんなに言われたくないだろ!?」
「早く行けよ!」
「ほら!ほら!ほら!!」
いつもそう。
説教の最後はこんな感じ。
僕は風呂に入って寝ることにした。
「………。寝れない。」
自主学習をしていない分、時間はまだ早かった。
ということは、父親が寝るのはまだまだ先。
しばらく僕は落ち着く事が出来ないということだ。
だからといって、何かをするわけでもない。
勉強部屋には勉強道具や学校のものしかない。
漫画とか娯楽品は中学生になって
2階の部屋から勉強部屋に移ったときに
全て捨てられてしまったからだ。
このときは携帯なんかも持たせてはもらえなかった。
「携帯欲しいなー。」
「ゲームもしたい。」
「みんなの家もこんな感じなのかな。」
「僕だけがこんなにダメな子なのかな。」
父親が寝るまで寝付けない僕は
考え事や妄想をするようになった。
妄想の世界は偉大だ。
何でも叶う。何でも自由だ!
ヒーローにだってなれる!
妄想の世界は大好きだった。
唯一の楽しみでもあった。
妄想の世界ではオリンピックで活躍するバレーボーラーに!
世界で一番格好よいピアニストに!
ときには不良になったこともある。
僕の後ろには100人の不良がいる。
勿論僕がリーダーだ。
そして、町を徘徊する。
ショッピングモールの中も僕が率いる不良達で歩くのだ!
僕が誰よりも凄い!誰よりも強い!!
そう……。妄想の中では……。
「あれ?リビングの電気が消えてる。」
いつの間にか父親は寝静まっていた。
「もうこんな時間か…。寝なきゃな。」
「あ。明日の準備してなかったな。」
「明日は何の授業があるんだっけ?」
時間割り表を見てみた。
「まじか…。英語も国語もある。テストが返ってくる。」
一気に現実に引き戻された。
明日になるのが嫌だ。
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