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「ねえねえ!時間大丈夫なの??」
「今日は休みとかあるの?」
寝ている僕の体を揺すりながら
お母さんが僕を起こした。
「え?うわ!やば!遅刻だ!」
「着替えたらもう学校に行くね!」
テスト期間で徹夜をしていて疲れがたまってたせいかうっかり寝坊してしまったのだ。
急いで着替えて家を出ようとした。
「おい!!!!!!!」
「顔洗えよ!!!歯を磨けよ!!寝癖を直せよ!!!!」
「不潔だなお前は。」
突然そう怒鳴ったのは父親だった。
いつもより遅い登校だった為
父親が起きる時間とかぶってしまったのだ。
そして、遅刻ギリギリだった為
僕は顔も洗わず歯も磨かず寝癖も直さず家を出ようとしたのは自分でも分かってはいた。
けど、遅刻が嫌だった。
今日だけ出来なそうになかっただけだ。
急いで顔を洗い歯磨き寝癖を直した。
そして、学校まで走っていった。
遅刻はするし朝から怒られるし。
今日は本当についてない。
今日はテスト返しだし
家に帰ってからもどうせ怒られる。
そして、早速テストが返されていった。
数学、理科、社会は
90点以上で問題はないと思った。
しかし、英語と国語だ。
英語はまだ問題が説けた方だと思ったが
ことごとく×だった。
国語に関しては採点された回答用紙を返されてから驚いた。
改めて見るとぱっとみ×ばかりの白紙なのだ。
記号問題と漢字くらいしかそもそも記入がされていない。
「終わった。」
僕はそう思った。
家に帰りながら
「怒られたくない。怒られたくない。」
「どうしよう。どうしよう。」
そんなことばかり考えていた。
このまま消えてしまいたいとも思った。
いつも家に帰るのが嫌だったが
今日は特に嫌だった。
そんな日に限って家に着くのが早く感じる。
重い足で
家に上がる。
父親はまだ帰る時間ではないが
家に入ると逃げ場がないという意識が強い為
父親が居なくても
帰るのが嫌だったのだ。
「ただいま」
ただいまや、おはよう、おやすみは
必ず言わないとならない。
マナーとかそういうのじゃなくて
無言で帰ったり無言で学校に行ったりすると
父親に怒られるからだ。
「何、存在を消してるんだ!」
「俺が見逃すと思うか!!」
言わなかったり声が小さくて聞こえてなかったりすると痛い目を見る。
殴られるのが嫌で僕も言ってるだけ。
「おかえり。」
「その様子だと点数悪かったの?」
お母さんが声をかけた。
「うん。」
僕はそう言って勉強部屋に入った。
勉強部屋を自分の部屋だとは思ったことがない。
確かに勉強部屋で寝ているし
家族からは僕の部屋だと言われているが
僕は認めない。
ここは勉強部屋。監視の部屋。
心の落ち着かない部屋。
自由の無い部屋。
勉強机に向かって座ってないと怒られる部屋。
常に勉強していないと起こられる部屋
ぼーっとすることも許されない部屋
「大嫌いな部屋だ。」
「こんな部屋。こんな家。燃えて無くなってしまえ。」
僕はキッチンに行った。
燃やす物を探そうとしたからだ。
タバコを吸う人が家には居ないため
ライター等は無い。
「何してるの?」
後ろにはお母さんが立っていた。
「喉が乾いた」
結局僕は何も出来なかった。
そして、父親が帰ってきた。
僕は恐る恐る玄関に向かい
テスト結果を渡した。
「国語は今日は返って来ませんでした。」
僕は嘘を付いてしまった。
一番結果が酷かった国語のテストの結果を見せたくなかったからだ。
「………。分かった。」
え?え?え?え?え??
「風呂は?」
「まだです。」
え?え?え?え?え?
「先、入って良いぞ。」
え?まじか。まじかまじかまじかまじかまじかまじか!!!!!!
初めてついた嘘は罪悪感があったが
分かったと言われた途端に
罪悪感が別の何かに変わった。
「嘘って凄い。」
今日は気分が良い。
どうせこの後、国語以外のテスト結果で怒られるのは分かっていたが
今日は耐えれる気がした。
「明日はそもそも国語の授業がなかったとか嘘付いちゃおうかなー?」
そんな事を考えながらお風呂に入った。
しかし、父親はそんな甘い人ではなかった。
しばらく湯船に浸かって髪を洗い顔を洗い体を洗った。
お風呂とトイレは長い方だった。
一人の空間になれるからだ。
一人の空間になるとどうしても居座ってしまう。
長過ぎると怒られてしまうから
時間の調節は難しいけどね。
そして、リビングに入る前に
怒られるスイッチに切り替えた。
別の人間になったイメージだ。
人格が変わるイメージだった。
リビングに入ったら
テーブルの上には僕の答案用紙が並んでいた。
「よし。怒られよう。」
何かがおかしい。
父親の雰囲気がいつも以上に怖い。
すぐにその理由が分かった。
テーブルの上に置いてある答案用紙が
父親に渡した数よりも1つ多いのだ。
そう。国語の答案用紙だ。
渡してないのに、目の前にある。
「おい。。。」
父親は震えている。
怒りで震えているのだろう。
「国語は???」
「今日は????」
「返されなかったんじゃ???」
「なかったんですか?????」
丁寧語が混じってるときは
やばい。リビングが半崩壊する。
父親は僕の嘘を見抜いていた。
いつもなら父親が帰ってきたら
急いで玄関に行くのに
今日はおどおどしていたからだそうだ
他にも表情がとか色々言っていた気がするが
殴られることに耐えるのに精一杯で
父親の声など僕には聞こえていなかった。
「おい。勉強は嫌いか?」
疲れきった父親が僕にそう言った。
嘘ついたことで殴られたせいで
嘘をついたらすぐにバレてしまうと思った。
「嫌いです。」
「なら、高校には行きたくないってことだよな?」
「高校、学校は勉強をしに行く場だ」
「つまり高校には行きたくないってことだろ」
「働いて早くこの家から出ていけば良い」
父親は中1の僕にそう言ったのだ。
のちのちにお母さんに
「お父さんは高校のこと、先のことを考えての教育なのよ」
と、言われたが僕には分からなかった。
「高校には行きません。就職します。」
「勉強ももうしません。」
「せいぜい頑張れよ」
「お前は誰にでも出来る様な仕事を、つまらない仕事を汚、い仕事を永遠にやることだな。」
「そんな、誰にでも出来る仕事なのにお前より遅く入ってきた後輩にすら抜かされて後輩からバカにされるんだよ」
なんとでも言えと思った。
なんたって今日から勉強しなくて済むんだ!
「やったー!!!!!!」
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