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「で、姉さんは?」
「えっと、ヨーロッパに演奏旅行に行きました」
「なるほど。自分が子供の頃にされたように、今度は自分の子供を放ったらかしか」
――― それは……当たっている。
「あの指揮者も一緒か?」
間宮が聞いた。
「父さんのことですか?」
「ほかに誰がいる」
「一緒です」
――― 父さんのことをなぜそんな呼び方をするのだろう?
――― 嫌いなのかな? 僕のことも嫌いなのかもしれない。
僕の心にどんどん不安が広がり始め、ますます逃げ出したくなった。
「お前のお姉さん何者?」
加瀬君が聞いた。
「姉夫婦は揃ってクラシックの音楽家だ」
「うわ、すっげえオシャレ。その話、初めて聞いた」
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