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 僕の名前は(たちばな)慈雨(じう)。高校2年生。  何でこんな険悪な場面に立ち会わねばならなくなったのかを説明する。  僕は三十分ほど前にここに一人でやって来た。  ここは東京の目黒通り沿いにあるカフェ「Lab&Gallery(ラボアンドギャラリー) Café SPACE(カフェスペース)」。 ――― たしか、Lab(ラボ)って研究室だよな。  そう思いながら店内に入った僕は、白衣を着た店員がフラスコを使ってコーヒーを淹れている姿を見て、Labと称する理由が分かった。 ――― これって研究室プレイ?  奇妙な光景とフラスコにつられて思わずカウンタ席に座ってしまったが、コーヒーを飲みに来たわけではなかった。そのときは、目の前にいる白衣の男性と僕と三人の女性たちだけだった。三人のうち一人は、三十代半ば山咲さんで、あとの二人は二十代半ばくらい。  僕は白衣の男性に話しかけたいのだが、いつも山咲さんが話しをしていて、話のきっかけが掴めないでいた。白衣の男性が「山咲さん」と呼んでいることからも、以前からの知り合いであるらしく、恋愛相談をしている。彼女の相談内容はこういうことだった。  会社の同じチームに彼女が狙っている年下のイケメン社員がいて、その彼と随分前からかなりいい雰囲気なのだが、イマイチ関係が進展しない。 どうすれば関係が進展するのか? という女性誌の読者投稿欄に載っていそうな話である。  断っておくが盗み聞きをしていたのではない。彼女の声がもの凄く大きいので、話の内容がコの字型のカウンタ席の端にいる僕のところまで丸聞こえなのだ。女性三人は、同じ会社の同じチームで仕事をしている先輩後輩の関係らしい。  飲み会を企画して誘えば彼は来るし、お目当ての彼と今ここにいる後輩女子とほかの男子達を交え、ほぼ毎週のように一緒にご飯を食べに行ったり、遊びに行っている。自分の誕生会も彼を含め後輩みんなで開いてくれたという。  それだけではない。
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