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山咲さんは同じ後輩連中を率いて何度か国内外へ旅行にも行ったようだ。社内ではどの女性よりもプライベートで長く一緒に居るのは間違いない。とにかく誘えば来るし、彼もまんざらではなさそう。
「にもかかわらず、二人きりでは抜け出せないかあ」と白衣の男性がいった。
――― そやもう彼女がいるんだろう。
そう思ったが当然口には出せないので、余計にフラストレーションが溜まる。
「いつまでもグループ交際で関係が進展しないってパターンか。そのいつも一緒に遊んでいるメンバはみんな君より年下なの」白衣の男性が聞いた。
「そう」
「後輩に好かれるんだね」
ガハハハハハハ!と山咲さんの嬉しそうな笑い声が、高い吹き抜けの天井に響いた。
「海外ってどこに行ったの?」
「ハワイ」
「遠いね」白衣の男性が驚いた。
「あのときは三泊五日の超強行軍でみんなキツかったよねえ」
連れの女性二人のうち、青いブラウスを着た女性が、もう一人の黄色いワンピースを着た若い女性に向かっていった。黄色いワンピースの女性が少し困ったような表情を見せて小さく頷いた。
「ハワイに行けたんだからいいじゃない」
山咲さんが反論した。
かなり強引な人のようだ。
「そんなに大勢で一斉に休みを取って、仕事に支障はなかったの?」と白衣の男性がもっともな質問をした。
「平気、平気。気に喰わない部下に仕事を押し付けてやったから。
あいつは普段から仕事をなめてるからいいの」
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