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「あれ? 知り合い?」
白衣の男性が驚いて間宮に聞いた。
「甥の橘慈雨だ。確か高2」間宮が答えた。
――― ば、バレてる~。
僕は絶望的な気持ちになりながらも微塵も態度には出さず、思わず「はじめまして」といってペコリと頭を下げた。
――― うわーしまった。
――― シラを切って店を出るという手もあったのに、反射的に挨拶してしまった。
――― 愛想のいい自分が憎い。
「うっそぉ。 宙の甥?」
白衣の男性は文字どおり鳩が豆鉄砲を食ったように目を見開いて、僕の顔をまじまじと見た。
「姉の息子だ。でも今日が初対面だ。こちらはここの店長の加瀬」
間宮は僕に白衣の男性を紹介した。
「はじめまして。橘慈雨です」
僕は加瀬君にも頭を下げた。
「はじめまして。初めて会うのによく彼が甥だと分かったな」
「分かるさ。今日辺りそろそろ来るだろうと思っていたから。彼がここで困っていそうだったから降りてきたんだ」
「そろそろって、お姉さんも随分アバウトだな」
加瀬君は少し笑った。
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