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共同作業
鈴木さんはやせ型で、身長はおそらく140cmくらいだろう。
髪の毛は白髪交じりで後ろを1つ結びにしており、施設ならではのクリーム色の病衣を着せられていた。
皺だらけの顔、皺だらけの手で、毎日の生活を送っていたが、食事や歯磨き、着替えなどは、こちらが準備すれば大方自分で行えていた。
どうやら最近は足腰が弱くなってきているとのことだ。
100歳…それはそれでどうしようもないことのように思えた。
鈴木さんとテレビを見ていると、児玉さんが大きな模造紙を持ってやって来た。
「杉堂くん、これに大きな楓とイチョウを描いてくれない?」
目の前に模造紙を広げると、そう言って、僕に鉛筆と花の図鑑を渡した。
僕は戸惑いながらも、それを承諾した。
こう見えても、絵には少し自信があった。
模造紙の大きさを確認し、その上半分のスペースを使って、右側に楓を、左側にイチョウを、そして中央にはおじいさんとおばあさんが寄り添って歩く後姿を描くことにした。
図鑑を見ながら、せっせと描いている姿を、鈴木さんはずっと見ていた。
「寅雄さん…いつからそんな絵を描けるようになったの?」
「いや…実は若い頃に、少し書いたことがあって」
僕は話を合わせて、笑顔で答えた。
「へーそうだったの」
鈴木さんはその後も、僕の描く絵をまじまじと見続けていた。
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