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次の日も、僕たちは貼り絵に精を出した。
午前の部と午後の部、僕らは時々休みながら作業を進めた。
ある日、その日の作業を終え、いつものようにお茶を飲んでいると、鈴木さんが話しかけてきた。
「寅雄さん…ご飯はしっかり食べてますか?」
いつもはあまり語ることのない鈴木さんだったから、僕は少し驚いた。
「ええ。しっかり食べてますよ。
僕のことはいいから、ヤエさんは自分の身体のことを労わってください。
この貼り絵、集中してやってるけど、疲れてませんか?」
「いや、私は大丈夫。寅雄さんはいつも優しい。
ありがとう」
そういうと鈴木さんはにっこりと笑った。
その時の鈴木さんは、少女のようにあどけなかった。
「ありがとう」という、普段は気にもしない言葉が、こんなに温かく聞こえたのは生まれて初めてだった。
僕は鈴木さんから、たくさんのことを教えていただいてる気がした。
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