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みんなで仕上げた作品を前に、僕は鈴木さんに声を掛けた。
「ヤエさん…本当にありがとうございました。
初めはどうなるかと思ってたけど…ヤエさんの協力のおかげで何とか完成させることができました」
「いえいえ。とんでもない。
私はほんの少ししか加勢できなくて…ごめんなさいね」
鈴木さんは僕に向かって手を合わせた。
「僕はしばらくここを離れて、違う仕事場に行かなくちゃいけないんです。
しばらく会えませんが…必ずまた会いに来ますから。
それまで、ちゃんと待ってていただけますか?」
僕は鈴木さんの目を見ながら、その心に訴えかけた。
鈴木さんは少し悲しい表情に変わったが、すぐに笑顔を取り戻し、
「分かりました。ちゃんといい子にしています。
どうぞ、ゆっくりなさって下さい」
そういって、頭を下げた。
そして最後の握手を交わした。
それは、僕らが一緒に作った楓とイチョウの間にいる老夫婦そのものだった。
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