夢のまた夢

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 施設長に挨拶をして、僕らはそれぞれお世話になった現場へと向かった。  扉をくぐると、すぐに児玉さんの顔が見えた。  向こうもこちらに気づくと、人懐っこい笑顔でこちらに手を振ってくれた。  そして食堂には、あの時に創った貼り絵のカレンダーが飾られていた。 「10月が終わったら、次の作品に変えなくちゃいけないんだけどね」  時の流れと共に作品を入れ替えて、季節感が少しでも病棟内に流れるように配慮している様子が分かった。 「ところで、鈴木さんは元気にしてますか?」  僕はいつもの場所に鈴木さんの姿が見えなかったので、児玉さんに尋ねた。 「鈴木さんね…」  児玉さんが神妙な面持ちになった。 「鈴木さん、ついこの間、亡くなったんだよ」  児玉さんはうつむきながら答えた。
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