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ヤエおばあちゃん
後ろを振り返ると、車椅子を漕いでこちら向かってくるおばあさんがいた。
明らかに僕に視線を向けている。
それもただの視線じゃない。
血走った目でこちらを見据え、こちらに猛進していた。
僕はどうしてよいかわからず、その場で硬直していたところ、すぐに看護師が駆け寄り、その方をなだめていた。
しかし、その老婆は僕の方を見つめたまま、看護師を振り切ろうと必死だった。
僕は児玉さんに連れられて、控室へと連れて行かれた。
「驚かせてごめんね」
児玉さんは優しく語りかけた。
「あの人…知らない人を見かけると、ああいう風になっちゃうんだ。
決して悪気はないんだよ」
2人分のお茶を淹れ、1つを僕に差し出した。
僕はまだどきどきしていたが、児玉さんが出してくれたお茶を一口飲むと、少しずつ落ち着きを取り戻していった。
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