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10階
「下へ参ります」
「は?」
エレベーターに乗ると、エレベーターガールがいた。
エレベーターガールなどと思った私がおかしいのだろうか?でも、紺のタイトスーツに帽子。白い手袋をはめてエレベーターのボタンの前に立っていたら、誰でもエレベーターガールと思うだろう。
「あれ?何?ここ、うちのマンションじゃないの?間違えた?」
慌てて辺りを見回した。狭くて古くてちょっと汚い。ここは間違いなく築20年の自宅マンションだ。
「扉が閉まります」
戸惑う私を無視して、エレベーターガールは閉じるのボタンを押した。
「えっ、ちょっと何で…」
ガタンと小さく揺れて、エレベーターが下がっていく。
このマンションに地下はないのに、何で下がった?
回数ボタンを覗き見ると、ありえないほど多くの数字が並んでいた。そして、光っていたのは10の数字。
チーン
「10階でございます」
地上7階建のマンションに10階?しかも、下がったのに?
混乱して声も出ない私を置いてけぼりに、ドアはゆっくりと開いた。
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