40階

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40階

「また、お会いするとは…」  再び彼女に会えたのは、紗香の電話から1週間後。彼女は私の顔を見るなり、意外そうに呟いた。 「えっと…下、ですか?」 「上へ行きたいの。この前より上に」 「お客様……」  彼女は、困ったような顔をした。私は自分の不安を解消することに頭がいっぱいで、彼女のそんな様子に気付かず詰め寄った。 「下に用はないの!上に行ってちょうだい!」 「…………」  彼女は怯えた目で、私を見る。そこで私は作戦を変えた。 「お願い…」  強く迫るのをやめ、懇願するように言った。すると、ようやく彼女は頷いてくれた。 「上に…参ります」  チーン 「40階でございます」
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