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アメリアは朝食前に服を着替える為、薄い桃色のローブを羽織り、ウィリアムの部屋を後にした。彼女は侯爵夫妻から与えられたこの屋敷の自室に向かう為、長い廊下を進んでいく。すると、角を曲がった所でルイスと出くわした。彼はアメリアに気が付くと、自然な足取りで彼女の横に並ぶ。
「おはようございます、アメリア様。よくお眠りになられましたか?」
ルイスの表情はいつも通り爽やかであった。それはまるで、あの日の契約など最初から無かったかのように感じさせる程に。
この屋敷にアメリアが来てから二か月が経つ。けれどそれから一度だって、ルイスがアメリアにあの日の話をすることは無かった。ルイスはただアメリアに対し、ただ親身に接するのみ。しかしそれは、自分の主人に接する類のものとは少し違っているようだった。
本来ならば、主人ウィリアムの婚約者であるアメリアに対して、男であるルイスが必要以上に近づくことなど許されない。けれどルイスは、そしてウィリアムもそれを決して厭わなかった。それどころかルイスはアメリアに対し、ウィリアム以上に紳士に接するような態度を取り続けている。とは言っても、それは恋人に対するようなものではなく、どこか友人のように親し気で、悪友のように気安い様子を感じさせるものであるが……。
そしてまたアメリアも、そんなルイスの態度をよしとしていた。もちろん侯爵夫妻や他の使用人の前では、ルイスがアメリアに必要以上に近づくことはない。けれどアメリアはウィリアムと三人のときや、そしてルイスと二人きりのときは、それなりにルイスに心を許しているような態度を取っている。
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