第3章 再会

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「違う。これは彼女の友人としての言葉だ。僕はまだ騎士でもないし、彼女に仕えられるような立場の人間でもない。でももし少しでも彼女が望んでくれるなら、僕は本当に彼女の友人として彼女の傍に居たいんだ。――許されないことだとしても」 「……そう、ですか」  ルイスはライオネルのまっすぐな瞳に、その迷いのない横顔に再び目を細め「でしたら――」と続ける。 「貴方の覚悟、そして誠意をお見せ頂けますか。不本意ながら私、アメリア様の生き方には少々不安を覚えておりまして……。どなたかお諫めして下さる方が居れば……と考えていたのでございます。アメリア様の評判は既にご存じでしょう? あの方は一筋縄ではいきません。ですがどうやら貴方には心を許しているご様子。ですからライオネル様、もしあなたが望むのなら、私があなたをアメリア様のご友人として、ウィリアム様に推して差し上げます」 「――え」  ライオネルは、ルイスの言葉に一瞬その足を止めた。けれどすぐに再び歩きだす。――もし本当にそんなことが可能なら、自分はアメリアの隣に立てるということだ。あくまでも友人としてだけれど。でも、それでも……。――ライオネルは、尋ねる。 「覚悟と、誠意……とは」 「簡単なことでございますよ。貴方が今背負っているその子供を、貴方が自らの手で躾ければよろしいのです」 「――え?」  ――それは法を裏切れということか? アメリアを諫めろと言ったその口で、僕に法を犯せと言っているのか?  ライオネルは驚きのあまり目を見張る。 「どうもアメリア様はその子供に並々ならぬ感情を抱いておられるご様子。アメリア様のお心を掴むには、それくらいして頂かなければ」 「……」 「ですが、どうか勘違いなさらず。私は別にその子供を殺せと言っているわけではありません。警察には引き渡さずに、自らの手で哀れな孤児を救済してみせよ――と申しているだけ」  ライオネルを見つめる、ルイスの漆黒の瞳。それは底なし沼のように暗く――深く――ライオネルの心の奥へと入り込んでいく。ライオネルの決心の強さを推し量る様に。  ――ルイスは……微笑む。
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