第2章 束の間の平穏

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 元々アメリアは、カーラに悪い感情を抱いてはいない。本来なら人を寄せ付けないオーラを放っていたアメリアであったが、その必要も無くなった彼女は、普通の十八歳の少女として、純粋な心根を持つカーラにすぐに心を許した。毎日お見舞いに訪れる、可愛らしい少女。アメリアはその心根の優しさを、とても嬉しく好ましく思っていた。  そんな二人であったから、親しくなるまでにそれほど時間はかからなかった。今ではすっかり、姉妹の様に仲睦まじい間柄だ。  アメリアは嬉しそうにその桃色の封筒を見つめる。そしてルイスは、そんなアメリアの姿に口元を緩めた。 「お茶会、ピアノ、ダンスにサロン……今回は一体何でしょうね」  ルイスは指折り思い出しながら、ふっと笑ってそのままもと来た方へと歩いて行った。アメリアはその背中を見送って、ようやく気が付く。いつの間にか、自室に辿り着いていたことに。  もしかしなくても、ルイスは私を送ってくれたのだろうか。  アメリアはそんなことを考えながら、静かに部屋の扉を開けた。すると――。 「お嬢様!おはようございます!」  廊下まで聞こえるような、ハツラツとした声が部屋に響き渡った。この声の主は、そう、アメリアの侍女、ハンナである。  彼女もまた、アメリアと同じようにこのウィンチェスター侯爵の館に迎え入れてもらっていた。まだ結婚前のアメリアには何かと気苦労もあるだろうから着いていきたいと言うハンナの希望を、サウスウェル家、そしてセシル家は共に受け入れていたのだ。そういう訳で、ハンナはサウスウェル家に仕える身でありながら、アメリアの侍女としてこのセシル家に住んでいる。給金はサウスウェル家から出ているので、ここではハンナも半分お客様の様な立場であり、使用人用の部屋ではあるが、丸々一部屋を与えられていた。  そういう訳で、ハンナはこの屋敷の使用人ではないので、服装は自由である。自由と言っても派手な服装をすることは無く、至ってシンプルなものであるが、今日のハンナは少し赤みがかかったオレンジ色の無地ドレスを身に着けていた。
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