最終話 時には蛇足が重要なこともある

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 都合よく事件が翼の周りで同時期に起こるはずはない。それは翼自身が指摘していたことだ。しかもどれも研究に絡んだ何らかの問題を抱えている。余計に何もないと考えられない状況だ。 「ううん。だったら尚更、真相を明らかにしたいと思わないのかな」  パソコンをシャットダウンしつつ、翼の心理はやっぱりすっきりしないよなと思ってしまう。そのまま慶太郎の忠告を受け入れ、海外に出る決断をするというのも変な話だ。 「とはいえ、あの兄貴が自分の過去を語るとも思えないし」  圧倒的に情報が足りないのだ。とはいえ、大学院時代を知る知り合いはいない。理志は何か知っているかもしれないが、当時はアメリカだ。あの翼が相談するとは思えない。 「まあ、自分の気持ちをすっきりさせるためにやってみるか」  あまり乗り気はしないが、麻央に連絡を取ることにした。事件について本当にあれで終わりなのか。それを確かめたいとメールする。麻央ならば何か探っているのではないか。そんな期待があった。 「おっ」  するとすぐに返信があった。どうやらあちらも決着が着いていない気分であったらしい。 「今日の午後は、大丈夫っと」  予定を確認し、午後の授業はない日であることにほっとした。このもやもやは早めに解消したい。 「でも」  真相を総て知るには慶太郎に確認するしかない。しかしそれはどうあっても出来ないだろう。そもそも本人が認めるはずがないのだ。 「そう言えば」  あの事件の時の顔。そして真っ直ぐに慶太郎だけを見ていた翼。その状況からしても、二人にはあの時点で解っていたはずだ。つまりあそこで総ては完結するはずだったのではないか。 「ということは、三件目の放火殺人は無関係なのか。ううん、妙な要素が増えてしまったな」  考えれば考えるほど答えから遠ざかっていく気がする。これはさっさと麻央に確認してしまった方がよさそうだ。昴は気持ちを切り替えると、ノートパソコンを持って大学に向かったのだった。  しかし、予定外のことは何時でも待ち受けているものだ。午後の予定どころか総ての予定を覆すことが待ち受けていた。それは大学に着くと、いきなり由基に捕まったことから始まる。そしてこれを見ろと、大学の掲示板まで連れて行かれた。 「マジで驚きだよ」 「一体何が」  多くの連絡事項はまだ掲示板で行われるとはいえ、何があったというのか。しかしそこに掲げられた内容に、昴は見事に固まってしまった。 「そ、んな」  それはあまりに唐突な展開だった。昴は掲示板から目が離せなくなる。そこに記されていたのは、慶太郎が亡くなったという事実を知らせるものだった。そしてその下に葬儀についての報せが書かれている。
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