四幕

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「貴方には会えなくなります。幕府より許しを得ましたから、明日にでも国表(くにおもて)へ帰らねばならぬのです」 「そんな……。そうなのですね」  富乃は若侍の手を取り両の手で包むと、自分の方へ引き寄せようとした。それを若侍は拒むように力を込めた。 「わたしの様な不浄な女子は汚らわしいとお思いなのですね」 「いいえ、そんな事は思ってもおりません。貴女は美しく聡明な方。私には眩しすぎる程です」  富乃は手を自分の胸に当て若者の手を握り締めた。  「ならば何故、わたくしに触れてはくれませぬ? 何故、自分のものにしようとはなさらないのです?」  見詰め合う二人の瞳が潤み、富乃の頬に涙が伝った。
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