四幕

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 富乃に入れあげている若侍の噂は直ぐに市中へと広まり。耳にした馴染み客を嫉妬させた。その中には油問屋大見屋平蔵の姿もあった。    噂を聞き、身請けを承知しないのは若侍の所為(せい)なのだろうと迫る平蔵に富乃は、「若様は共に学問を学ぶ友なのです。あの御方はわたくしに指一本なりともお触れになりません。夫婦が一生涯のものなれば、友もまた一生のもの。平蔵様もわたくしの友となられては如何(いかが)ですか?」と、言った。これに平蔵は何も言い返せなかった。
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