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富乃に入れあげている若侍の噂は直ぐに市中へと広まり。耳にした馴染み客を嫉妬させた。その中には油問屋大見屋平蔵の姿もあった。
噂を聞き、身請けを承知しないのは若侍の所為なのだろうと迫る平蔵に富乃は、「若様は共に学問を学ぶ友なのです。あの御方はわたくしに指一本なりともお触れになりません。夫婦が一生涯のものなれば、友もまた一生のもの。平蔵様もわたくしの友となられては如何ですか?」と、言った。これに平蔵は何も言い返せなかった。
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