序幕

1/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ

序幕

 その女は、名を富乃(とみの)と言った。齢はまだ十六と言ったところか。それは実の所、富乃自身にもよくはわからなかった。名も育ての親が富と名付けたにすぎない。    富はまだ七つにも成らぬであろう頃に、街道(かいどう)から随分と離れた竹林の中で泣いているところを近隣の百姓に拾われ、やがて口減らしの為に、※女衒(げせん)に売られたからである。 ※女衒(げせん) 人買い
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!