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狩人の町
よく晴れた夏の日のことだった。森の中を、深い緑色をした床の高い車が、道なき道を走っていた。車は、木々を上手に避けながらどうにかこうにか進んでいた。
車の中には二人の青年が座っていた。運転席に座っている青年は、筋肉質で背が高く実直そうな面立ちをしていた。助手席に座っている青年は、中肉中背で人懐っこそうな顔をしていた。今、二人は車の振動と道の険しさに顔をしかめながら、車が森を抜ける瞬間を待っていた。
「この道はいつまで続くんだ」
実直そうな面立ちをした青年がそう言った。
「そう焦るなよ、リアム。もうすぐ森を抜けられるだろう。気楽に行こう」
人懐っこそうな顔をした青年がそう言った。
「ユーゴ、そうは言ってもいい加減にしないと――」
リアムと呼ばれた青年がそう言った次の瞬間、車は森を抜けていた。草に覆われて分かりづらくなっていたが、山に沿うように作られた道に出たようであった。ユーゴと呼ばれた青年は、目の前に突如として現れた道を指さしながらこう言った。
「このまま道なりにすすめば、次の町に着くだろう」
山の中に出来た道は大きなカーブが無数にある下り坂であった。車が何度目かの旋回をしながら坂を下ると、彼らが目指していた町の入り口が二人の目の前に現れた。町の入り口付近には、人の背丈の三倍ほどはある石造りの壁が設けられ、道は壁にある大きな門へと続いていた。リアムは車を門の正面まで近づけた後、停車させた。
「着いたな」
ユーゴがそう言うと、車から降りて門に近づいた。リアムと呼ばれた青年も車から降りた。
「ここが狩人達の町か」
リアムがそう言いながら、門の前で立ち止まっていたユーゴの横に並び、目の前の壁を見上げた。
「前の町の情報だと、この町は自然信仰が根強く、銃を毛嫌いしているらしい。なんでも、銃で生物を殺すのは、生物に対して敬意がないと考えているそうだ。僕らも銃を持っているから、扱いには気をつけた方がいいだろう」
ユーゴは、リアムに注意を促すようにそう言った。リアムも静かにうなずき、銃が見えないように、荷物からコートを取り出して羽織った。ユーゴはリアムの準備が整ったのを確認した後、門を叩き、「旅の者です。この町にしばらくの間、滞在したいのですが」と門の向こう側にいるはずの誰かに聞こえるように、大きな声でそう言った。しかし、何の反応も返ってはこなかった。ユーゴは門に近づくと、おもむろに門扉を押してみた。すると、扉は何の抵抗もなく動いた。
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