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「あの、お名前をお伺いしても?」
「ユージです。ノダ・ユージ」
「……なんか、日本人みたいな名前だけれど……?」
「ええ、母が日本人で、僕も日本生まれ日本育ちなんです」
「えっと、つまりハーフ?」
「そういうことです」
ジュリィはいきなり現れた『エドおじさんの息子』に驚きつつも、とりあえず話を聞きたいと思い、近くの公園のベンチに連れていった。
この青年にたずねたいことは山ほどあった。
おじさんから息子がいるなんて聞いたこともなかった。「僕はひとりぼっちでね。ジュリィがいてくれなきゃあ、友達もろくにいやしないのさ」。生前、おじさんはそう言ってはいなかったか。ましてや日本人の女性と関係があったらしいとは!
何がなにやら、さっぱりである。
「私の名はジュリィと言います。初めまして。いきなり、こんなところに連れてきてすみません」
「あ、いえ、そんな……」
「でも私、さっき言いましたがその、エドおじさんの友人だったんです。親友といってもよかったかも。……でもその、あなたのお話なんて聞いたこともないのです。息子さんがいるなんて話は。てっきり、おじさんは未婚の人だと思っていて……」
「無理もないと思います」
青年はうなずいた。
「僕も父とは2、3通手紙を交わしただけですから」
「というと……?」
首を傾げるジュリィにユージという青年は少し長い説明をした。
彼の父――エド・モーガンは20代のころ世界中を旅していた。芸術のためだったらしい。その途中で日本を訪れた。そしてユージの母に出会い、恋に落ちた。2人は出会いから1年も経たずに結婚した。だがその半年後、すぐに離婚届を出すことになる。
「いったい、どうして?」
ジュリィがたずねると、ユージは苦笑いしながらこう言った。
「母曰く、『なんでも勢いだけはいけない』だそうです」
「はぁ……、なるほど……」
言わんとすることはなんとなくわかった。要するに舞い上がった状態で結婚したために相手のことがよくわかっていなかったのだろう。そして結婚してから相手の欠点に気づいてしまい、それが呑み込めず……といったところか。
「そして、僕がお腹の中にいるとわかったのは、離婚した直後だったそうです」
「あら、まぁ……」
ユージの母は彼を産むかどうか、正直迷ったという。だが最終的には産み、そしてここまで育てた。
そのユージは、ある時から自分に父親がいないことを疑問に思い始めた。母に尋ねても詳しいことは教えてくれず――というより、そもそも別れたあとのことは母国に帰ったこと以外知らないようだった――自分で調べるしかないと考え始めた。外国語の辞書を片手に、独力で手がかりをあさった。
「それで、やっと居所がつかめたのが、2年半前でした」
「そうだったんですか。でも、おじさんはちょうどそのころ――」
「ええ。病気が見つかったんですよね」
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