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空港ロビー
「本当に何も言わないで行くの?」
空港の雑踏の中で、ショルダーバッグを肩に立ちあがった私にトモコが声をかけた。いいの?と言葉の後ろに彼女の心配が響く。無言で頷いた私に駄目押しで彼女の質問が飛んできた。
「あいつ、勝手だからすぐに忘れちゃうかもよ」
分かってる、トモコが私のためを思って言ってくれてるってことは。私の迷いも未練も全部お見通しなんだろう…でも。
「うん、大丈夫。いまさら声かけちゃったら、自分の決意も…ね」
空元気で言ってみせたけど、その後の言葉が口から出た時はちょっと本気で笑みがこぼれた。
「当分は私のこと忘れられないようにしてきたから」
笑いながらトモコを見る。トモコは何を言ってるか分からないと思うけど、でもきっと私の気持ちを分かってくれる。
大好きなユウヤの元を何も言わずに出てきた私の気持ちを。
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