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「いいから、つべこべ言わずに、早く貸せよ!!」
なかなか携帯電話を渡そうとしない美穂に、僕は声を荒げる。
もはや、力づくで奪うしかないか? 僕がそう思ったとき、美穂がおずおずとした様子で言った。
「彼に、電話をかけたり、メールを送ったりしないって、約束してくれる?」
あくまで浮気相手を守ろうとする美穂の態度に、僕は全身の毛が逆立ちそうになるほどの怒りを覚える。本当は、怒りにまかせて、大声で叫びながら、暴れたい。
だけど、まずは、美穂の手から、携帯電話を奪い取ることが先決だ。
僕は怒りをぐっと圧し殺し、
「わかった、約束する」
と答える。
もちろん、浮気相手に電話をしない保証など、するつもりはない。たとえ僕が、約束を反故にして、浮気相手に電話をかけたとしても、美穂の僕に対する裏切りに比べれば、かわいいものだ。
「じゃあ、貸して」
僕がそう言って、右手を差し出すと、美穂はようやく、後ろ手に隠していた携帯電話を僕に差し出した。僕は即座に中身を確認しようと、携帯電話の操作にかかるが、すぐに行き詰まる。
美穂の携帯電話は、セキュリティロックがかけられていて、暗証番号を入力しなければ、操作できないようになっていたのだ。
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