第1章 現在・僕

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 すると、美穂もそれを感じ取ったようで、慌てて立ち上がり、冷蔵庫の方に向かう。美穂は冷蔵庫から、よく冷えた缶ビールを取り出すと、急いで戻ってきて、僕に差し出した。  僕は奪い取るように缶ビールを受け取り、栓を開けて、一気に半分ほど、喉に流し込む。それで、少し落ち着きを取り戻した僕は、続いてメールの確認をすることにした。  僕は携帯電話を操作して、美穂と町村佑樹とのメールのやりとりを表示させる。新しいメールから順番に、古いメールへと遡っていく。  町村佑樹からのメールは、専用フォルダに振り分けられているため、確認していくのにそれほど手間はかからない。おまけに、うっかり削除してしまうことがないように、全て保護がかけられている。  メールの内容は、ごくごく他愛のないものから、デートの日程調整、待ち合わせ場所の調整など、まさに恋人同士のメールのやりとりだ。おまけに、一連のメールのやりとりの最後は、必ず、“愛してるよ”という言葉で締めくくられている。  町村佑樹も、本当に美穂のことを愛しているということなのだろうか?  そんなことを思いながら、メールを確認していくと、二ヶ月ほど前のメールに、僕の目が止まる。  DATE 2012/5/20  FROM 町村佑樹  SUB  今度のデート  本文  ねえ、来週の水曜日、どこか行かない?  友達との予定が急にキャンセルになって、暇になったからさ  というより、美穂に会いたかったから、俺がキャンセルしたんだけどね(笑)  連絡待ってるね  
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