第1章 現在・僕

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 フォルダの中には、二人が顔を寄せあって、うれしそうに写っている写真が何枚もある。写真で見る限り、町村佑樹は、ずいぶんと若く見える。まだ二十代前半、おそらく、学生か何かなのだろう。  おまけに、顔立ちは整っていて、いかにも女にモテそうな雰囲気を漂わせている。僕とは大違いだ。美穂が顔の良さを求めているのだとしたら、僕は絶対に町村佑樹にかなうはずもない。  写真を進めていくと、だんだんその内容も、過激さをましてゆく。  美穂と町村佑樹が唇を重ね合わせている写真やら、美穂が町村佑樹に抱きしめられている写真やら、思わず僕が目を覆いたくなるような写真が、続々と飛び出してくる。  極めつけは、美穂と町村佑樹の肉体関係を明らかにするような、一枚の写真だった。写真の中の町村佑樹は、上半身裸で、美穂は白いシーツで胸の辺りまで隠している。だけど、シーツの中の美穂が、その身体に何も纏っていないことは、一目瞭然だ。  おそらく、やることをやった後で、二人で撮った写真なのだろう。写真の中の美穂の顔は、どことなく、紅潮しているように見える。  ためしに、写真のプロパティを確認してみると、撮影日は、2012/5/30となっている。さきほど確認したメールにあった、水曜日のデートのときの写真なのだろう。
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