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「酔ったのか?」
木島が言う。
「ええ、少し酔ったみたいです。でも、大丈夫です。家、近いですから」
美穂は答える。
美穂の家は大学から徒歩5分。8畳のワンルームマンション。忘年会会場からだと徒歩3分。多少酔っていても、一人で十分に歩いて帰れる。
美穂は木島に礼を言い、再び家路に就こうと歩き出す。だけど、2、3歩くらい歩いたところで、またよろけてコケそうになる。木島が慌てて走ってきて、美穂の身体を支えてくれた。
「お前、何やってるんだよ……」
木島が呆れ顔で言う。
「木島さん、すみません……。でも、ちょっと休めば大丈夫だと思いますから」
「ちょっと休めば、って……。どこで休む気だよ……。もう、みんな帰り始めてんぞ?」
木島の言葉に、美穂は辺りを見回す。たしかに、さっきより更に人が減っている。木島は、フウッとため息を吐く。
「しょうがないな……。送っていってやるよ」
「えっ!? 大丈夫ですよ。わざわざ送ってもらったら悪いですし……」
「こんな状態のお前を1人で残して帰れるわけないだろう?」
「でも……」
「いいから!!」
木島はそう言って、美穂の言葉を遮ると、その場に残っていた先輩たちに向かって言う。
「すみません、俺、こいつ家まで送ってから帰りますんで」
先輩たちは、“よろしく頼む”という感じで手を振る。
「んじゃ、行くか」
木島はそう言うと、美穂の身体を支えて歩きだした。
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