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「そんなに町村佑樹の子供が欲しいのなら、僕と離婚して、町村佑樹と結婚して、それからゆっくり子供でもなんでも作ればいいだろう!?」
僕の発した“離婚”という言葉に、美穂は一瞬、ピクンと反応する。いよいよこれで終わりだ。
“離婚”は、おそらく美穂が僕の口から最も引き出したかった言葉だろう。結局、僕はまんまと美穂のやり口に引っかかってしまったということなのだろう。
だけど、美穂は顔色を曇らせ、僕が想像していたのとは異なる反応を見せる。
「ねえ、やっぱりあなたは私と離婚したいと思う?」
「どういう意味? 言っとくけど、僕はできれば離婚なんかしたくない。むしろ、離婚したがってるのは、君の方だろう?」
「私は離婚したいなんて、一言も言ってない……」
「だけど、君は町村佑樹が好きなんだろう? だから、お腹の中の子供も堕ろしたくないんだろう?」
「うん……」
僕の問いに、美穂は素直に頷く。町村佑樹への思いを否定するつもりは、全くないようだ。
美穂が何を考えているのか、もはや僕には理解できない。
「ねえ、君は一体どうしたいのさ? 町村佑樹が好きだけど、離婚はしたくなくて、でも子供は堕ろしたくないなんて、僕には君の考えていることがわからない!!」
「私だって、どうしたらいいかわからない!! 確かに佑樹のことは好き!! 子供も堕ろしたくない!! だけど、あなたのことが嫌いになったわけじゃない……。もちろん、美咲のことも好き……。もう、わけがわからない」
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