1816人が本棚に入れています
本棚に追加
美穂の言葉に、思わず、“わけがわからないのはこっちだ”と突っ込みたくなる。だけど、今は、そんな突っ込みを入れるような気力も、僕にはない。
子供のことも、はっきりとさせておかなければならないのだが、これ以上、同じやり方で美穂に言ったとしても、美穂は首を縦に振らないだろう。結局、堂々巡りになるだけだ。少し、アプローチのしかたを変えなければならない。
「なあ、町村佑樹は、君が妊娠したことを知ってるの?」
「ううん、知らない……。今日、あなたが帰ってくる前に、妊娠検査薬で確認したばかりだから……。まだ、佑樹には伝えてないの」
「とにかく、子供のことも含めて話をしたいというのなら、町村佑樹も含めて、三人で話がしたい。今から僕が、町村佑樹に電話をして、そのことを伝えるから」
「ちょっと待って!!」
美穂は慌てて僕の言葉を遮る。
「それについては、私からちゃんと佑樹に伝えるから……。ちゃんと、私とあなたと佑樹の三人で話をする場をつくるから……」
「だったら、今すぐ町村佑樹に電話しなよ。ぐずぐずしてる暇はないんだよ」
僕の言葉に、美穂は一瞬ためらったようだった。だけど、もはや逃げることはできない。そのことは、美穂も理解しているようで、少し間を置いてから、美穂は、小さな声で「わかった」と答えた。
最初のコメントを投稿しよう!