第10章 過去・美穂

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 美穂がぼんやりしていると、浩介が気を使って声をかけてくれる。 「美穂ちゃん、ホントごめん。今日ここに来るなんて知らなかったから」 「大丈夫だよ、鈴木くん。私、秀明の部屋にAV隠してあるのも知ってるし」  美穂の言葉に、秀明の顔が青ざめる。浩介はそんな秀明を見て、ニヤリと笑う。 「お前、完全に美穂ちゃんに見抜かれてるんだな」  浩介が言うと、秀明はただ黙って俯く。これ以上、秀明を困らせたらかわいそうだと思った美穂は、すぐにフォローを入れる。 「だって、私、秀明と一緒にAV見たこともあるし」  だけど、美穂は秀明と一緒にAVを見たことなど一度もない。ただ、友達の前で面目を潰した秀明をかばおうとしただけだ。  秀明もそれを察知して、 「そうだよな、美穂」  と、美穂の言葉に乗る。  美穂は黙って頷く。それで、浩介は納得したらしく、ウンウンと何度か首を縦に振る。  それから、浩介はおもむろにテレビのリモコンを手に取る。 「じゃあ、美穂ちゃんも一緒に見てみる? 人気AV女優の裏モノなんだけど」  浩介が言う。 「えっ!?」  美穂は慌てる。AVに興味があるとはいえ、さすがに心の準備ができていない。  だけど、ここで躊躇っていては、秀明に対すせっかくのフォローも意味がなくなる。美穂は満面の作り笑顔を浮かべて、 「うん、見てみたい見てみたい!!」  と、はしゃいでみせる。その言葉に、浩介は迷うことなくチャンネルを切り替える。テレビの液晶画面に、裸の男性と女性が映し出される。
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