第11章 現在・僕

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「ここから、町村佑樹の家まではどれくらい?」  僕は尋ねる。 「歩いて、たぶん10分もかからない」 「だったら、ちょっと早いね。このまま押し掛けてもいいけど、こっちが約束破る訳にはいかないから」 「……うん」 「じゃあ、どこかでコーヒーでも飲もう。たまにはそういうのもいいだろ?」  僕はそう言って、目の前のコーヒーショップに向かって歩き出す。そして、美穂の手を握る。思えば、美穂と手を繋ぐのはいつ以来だろう。ずいぶん長い間、無かったような気がする。もしかすると、こういう1つ1つの些細なことが、美穂を浮気に向かわせたのかもしれない。  僕は美穂と手を繋いだまま、コーヒーショップに入る。僕は自分のアイスコーヒーを頼んでから、 「何にする?」  と、僕は美穂に尋ねる。 「アイスココア」  美穂が答える。  僕は美穂の分のアイスココアも注文した。僕たちは窓際の席に、向かい合って座る。そして、コーヒーとココアを啜る。特に会話はない。何か話しかけてみようと思うけれど、言葉が浮かばない。こんな状況で和やかに話をするのも変かもしれない。  美穂は窓の外を眺めている。時間がゆっくりと過ぎてゆく。
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