1818人が本棚に入れています
本棚に追加
/680ページ
「ここから、町村佑樹の家まではどれくらい?」
僕は尋ねる。
「歩いて、たぶん10分もかからない」
「だったら、ちょっと早いね。このまま押し掛けてもいいけど、こっちが約束破る訳にはいかないから」
「……うん」
「じゃあ、どこかでコーヒーでも飲もう。たまにはそういうのもいいだろ?」
僕はそう言って、目の前のコーヒーショップに向かって歩き出す。そして、美穂の手を握る。思えば、美穂と手を繋ぐのはいつ以来だろう。ずいぶん長い間、無かったような気がする。もしかすると、こういう1つ1つの些細なことが、美穂を浮気に向かわせたのかもしれない。
僕は美穂と手を繋いだまま、コーヒーショップに入る。僕は自分のアイスコーヒーを頼んでから、
「何にする?」
と、僕は美穂に尋ねる。
「アイスココア」
美穂が答える。
僕は美穂の分のアイスココアも注文した。僕たちは窓際の席に、向かい合って座る。そして、コーヒーとココアを啜る。特に会話はない。何か話しかけてみようと思うけれど、言葉が浮かばない。こんな状況で和やかに話をするのも変かもしれない。
美穂は窓の外を眺めている。時間がゆっくりと過ぎてゆく。
最初のコメントを投稿しよう!