第2章 過去・美穂

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 美穂としても、たまには外に出て、友人と遊ぶくらいのことがなければ、息が詰まってしまう。  結婚して、子供ができるまでは、美穂にだって、いくらでも友人と遊ぶ機会があった。だけど、特に子供ができてからは、子育てに追われて、なかなか外に遊びに行く機会もない。変わり映えのしない毎日だけが、美穂の前にある。  だから、こういう誘いは、むしろ美穂にとって嬉しいものだ。 「でさぁ、今度の日曜日なんだけど、ご飯でも食べに行かない? 夜が無理なら、昼でもいいからさ」 「あ、日曜日なら、旦那もいるし、夜でもあんまり遅くならなきゃ大丈夫だと思う」 「了解!! また、時間とか連絡するからさ、3月4日の予定は開けといてね」 「りょうか~い。んじゃ、またね」 「うん、またね」  電話を切った美穂の心は、ウキウキと弾んでいた。とにかく、夫が帰ってきたら、このことを話して、ちゃんと許可をもらわなければ。  もっとも、智子のことは夫も知っているし、いまさら反対されることはないだろう。美穂は、弾む心で、残りの家事をこなしてゆく。心が弾んでいるせいか、いつもは面倒に思える家事も、苦になることなく、手際よくこなせてゆける。
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