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僕はデスクに戻り、再びパソコンと向かい合う。モニターと睨めっこしながら、キーボードを叩く。今日中に仕上げなければならない会議資料。定時までにできなければ、残業もやむを得ない。
だけど、僕の集中力は完全に無くなっている。佐々木の言葉が気になって仕方ない。キーボードを叩く手が、自然と止まる。叩いていても、ひどくミスタッチが多い。おかげで、作業は遅々として進まない。
クソッ……。
気になって仕方ない……。
このままじゃ、いつまで経っても終わらない……。
僕は携帯電話を握りしめて、再びデスクを離れる。そして、さっきと同じ廊下の隅に立って、佐々木に電話をかける。
だけど、かけた電話は、コール音すら鳴らない。流れるのは、“お客様の都合によりお繋ぎできません”のアナウンスコール。着信拒否。
「何なんだよ、いったい……」
僕は小さく舌打ちして、携帯電話をしまう。それと同時に、妙な胸騒ぎを覚える。
何かが起ころうとしている……。
彼女はいったい、何を考えてるんだ……?
僕は胸のざわつきを抱えたままデスクに戻る。今、僕にとれる手段など何もない。僕は佐々木の家さえ知らない。携帯電話が繋がらなくなれば、連絡の取りようもない。そのことが、僕の胸騒ぎを余計に掻き立てる。
結局、資料の半分も完成しないままに、僕は昼休みを迎えた。だけど、のんびりしている暇もない僕は、昼休み中もパソコンを叩き続ける。
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