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キーボードを叩いていると、誰かが背後から僕の肩を叩いた。振り向くと、そこに桜子が立っていた。
「どうしたの?」
僕は手を止めて、桜子に尋ねる。
「はい、これ」
桜子はそう言うと、コンビニの袋を僕の方に差し出す。受け取ってみると、中におにぎりが2つ入っている。
「これは?」
「さっき先輩に会ってさ。あんたが食事も摂らないで、昼休み中も仕事してるって聞いたからさ」
「え? いいの? じゃあ、お金払うよ。いくらだった?」
「別に気にしなくていいわよ。高いもんじゃないし。それより、昼休み中まで仕事してるなんて、珍しいじゃない」
「ちょっと、会議資料が間に合いそうになくてね」
「どうしたのよ。資料作成なんて、あんたの得意分野でしょ? いつもならパパッと終わらせるのに」
「まあ、いろいろあるんだよ」
僕はため息を吐く。
「何かあったの? もしかして、例の女の子から何か連絡があったとか?」
「えっ!? 何でそれを!?」
「えっ!? 図星なわけ!? 冗談で言ったのに」
「あ……えっと……」
「ああ、わかったわかった。こんなとこじゃ話せるわけもないよね。じゃあ、ちょっと今晩、付き合ってほしいんだけど」
「今晩? 資料作りが間に合えばいいけど。それに、彼女の話なら、何も今日じゃなくても……」
「私もあんたに話があるのよ。とりあえず、頑張って定時までに仕事終わらせてよね」
「わかったよ。努力はするよ」
「オッケー。じゃあ、よろしく頼むね」
桜子はそう言うと、自分の職場へと戻ってゆく。僕は桜子から貰ったおにぎりを食べながら、再びキーボードを叩く。
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