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「狂った女……。あんたが気にし過ぎてるわけじゃないってことはわかった」
桜子が僕の耳元で呟くように言う。
「うん。いままでも異常さは感じてたけど、もう、完全に狂ってる」
「何をするつもりかわからないけど、とにかく気をつけよう。余計な詮索をさせないためにも、できるだけ、私たちが2人でいるのはやめた方がいいかもね」
「そうだと思う」
「あんたはこれから真っ直ぐ家に帰ること。手術の結果とかは、メールか何かで知らせるから」
「わかった」
僕は短く答えて、缶の中のビールを飲み干す。そして、立ち上がろうと足に力を入れる。
そのとき、玄関の方から、物音が聞こえてくる。明らかに、誰かが鍵を開けようとしている音。
「え? 誰?」
桜子の顔に、明らかな不安が表れる。僕もゴクリと息を飲む。
ガチャリ。
鍵が開く。そして、ゆっくりと扉が開く。
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