第17章 現在・佑樹

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 佐々木香代子。ディスプレイには、ハッキリ表示されている。時刻は午後6時を回ったところ。佑樹は通話ボタンを押し、電話に出る。 「もしもし、町村くん?」  携帯電話から、佐々木の声が聞こえてくる。少し興奮しているのか、テンションが高く感じられる。佑樹とは対照的だ。 「ああ、そうだけど」  佑樹は短く答える。 「ねえ、この前の話だけど、ついに2人が動いたわよ」 「えっ!?」  佐々木の言葉に、佑樹のテンションも少しだけ上がる。 「とにかく、これから出て来れないかしら。少し打ち合わせをしましょう」 「ああ、わかった。どこに行けばいい?」 「オフィス街にある、ロイヤルホテルはわかる?」 「わかるよ」 「その前に、喫茶店があるの。そこで待ってるから。どのくらいで来れる? できるだけ早い方がいいんだけど」 「30分もあれば十分だよ」 「わかった。じゃあ、待ってる。あ、それと、桜子さんの部屋の鍵を持ってくるのを忘れないでね」 「わかったよ。じゃあ、できるだけ急いで行くから」  佑樹はそう言って電話を切ると、ベッドから飛び降りた。それから服を着替え、ズボンのポケットに財布を突っ込む。最後に、桜子の部屋の鍵を、ポケットに突っ込んだ。そして、佑樹は佐々木の待つ喫茶店へと向かった。
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