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佑樹が喫茶店に着いたのは、午後6時30分を少し回ったころだった。店に入ると、窓際の席に座っている佐々木の姿が見える。佑樹はその席まで行き、
「お待たせ」
と声をかける。
「早かったね」
佐々木はニコリと微笑み、紅茶を啜る。
佑樹は、お冷やとおしぼりを持ってきたウェイトレスに、ウィンナーコーヒーを注文する。そして、ウェイトレスが去っていくと、早速話を切り出す。
「それで、2人が動き出したって、どういうこと?」
「2人の会社の傍で見張ってたの。そしたら、2人で、桜子さんの家の方に向かって歩いて行ったわ」
「え? どこかの居酒屋に行っただけかもしれないだろ?」
「そうかもね」
佐々木はアッサリと言う。佑樹はその様子に唖然とする。だけど、佐々木は平然とした様子で言葉を続ける。
「でも、もし重要な話をするなら、他人がいない方がいいでしょ? だったら、居酒屋になんて行かないでしょ?」
「それはそうだけど」
「それに、桜子さんは独身なのよね?」
「うん」
「しかも一人暮らし」
「そこまで調べたのか?」
「うん」
佐々木は何でもないかのように頷き、
「だったら、秘密の話をするのは、自宅が一番よね?」
と付け加えた。
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