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「だけど、秘密の話って何だよ? 桜子が妊娠したって確証でもあったのか?」
「うーん、まあ、あったと言えばあったかな?」
「どういうこと?」
「昨日、桜子さんは産婦人科に行ったのよ。知ってた?」
佐々木はフフフッと不敵な笑みを浮かべる。
「知るわけないだろ!?」
佑樹が答えると、佐々木はもう一度笑う。
「私も、患者のフリして、待合室にいたのよ。大きな病院だから、1人や2人、患者以外の人間が紛れてたってわからない」
「そういうもの?」
「特に、産婦人科は、患者以外の来客も多いからね。で、桜子さんが帰り際に受付で貰った書類があるの」
佐々木が意味深長に言う。
「何だよ?」
「あら、町村くんも見たことがあるはずよ?」
「じらさずに言えよ!!」
佑樹は少し声を荒らげる。そこに、ウェイトレスがウィンナーコーヒーを持ってやって来た。佑樹はそれに気づき、気を落ち着ける。
ウェイトレスはウィンナーコーヒーを置くと、静かに去っていった。それを見計らったかのように、佐々木が口を開く。
「堕胎手術の同意書よ」
その言葉に、佑樹はかたまる。佑樹の脳裏に、あの日のことが蘇る。そして、美穂のことが、蘇る。
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